REPORT

ナレッジパス Vol.8 新しい世界を切り開く~Art Law を日本へ~

講師:木村 剛大 弁護士・ニューヨーク州弁護士 (小林・弓削田法律事務所) レポーター:財津成彰
講師紹介

知財訴訟、アート・エンターテインメント、ASEAN分野を中心に、企業法務全般を取り扱うビジネスローヤー。自身の豊富な海外経験、人的ネットワークにも強みを持ち、企業の海外戦略にも積極支援を行っている。また、「ART LAW」では情報発信サイト「ART LAW WORLD」を主宰するなど広く活動し、現在、ウェブ版美術手帖にて連載「アートと法/Art Law」を担当している。

新しい分野「ART LAW」の道を切り開く

今まであまり耳にしたことがなかった「Art Law」という分野。弁護士の数も多い欧米では、特定の産業にフォーカスした専門の法分野が確立されており、Art Lawもそのひとつです。

弁護士である木村先生がアートに携わるようになったきっかけや、ニューヨークへの留学のお話、どのように新しい分野を開拓していったのかについて語っていただきました。

ゼロからの出発。ニューヨーク留学でアートマーケットの中心に飛び込む。

弁護士としての未来を見据え、計画的に新しい分野を開拓することを考えて、知的財産分野での経験を活かしながらライフワークとしても取り組める好きな分野「アート」をテーマにした木村先生。しかし、興味はあるものの、アート関連のバックグラウンドやアート業界のクライアントもなくゼロからの出発だったとか。

そこでまず、アートマーケットの中心的位置を占め、事例や情報が豊富にあるニューヨークに留学することを選択。ロースクールでの法律の勉強と併せて、大手オークションハウスが運営するクリスティーズ・エデュケーション・ニューヨークのアートビジネスコースにも通うことにされました。他との差別化のためとはいえ、慣れない海外生活に加えてWスクーリングはなかなかできることではないと思います。

その際にどのような選択肢があり、どのように教育機関を選んだかなど、実際にそのような道を目指される方へのおすすめスクールなども具体的に教えていただきました。 木村先生が通ったクリスティーズ・エデュケーション・ニューヨークの他、2017年から始まったロンドン大学クイーン・メアリー校のLL.M. in Art, Business and Law、サザビーズ・インスティチュート・オブ・アート、NYU School of Professional Studiesといった機関の紹介がありました。

さらに、留学後半からはWスクーリングにさらに加えてArt Lawに強い現地の法律事務所であるダンジガー・ダンジガー・ムーロー法律事務所でインターンも行い、実務経験も積まれたそうです。この事務所のダンジガー兄弟が長年「Art + Auction誌」にArt Lawのコラム「BROTHERS IN LAW」を連載しており、ユーモアを交えながら質の高い法律情報を提供する執筆スタイルには木村先生も強い影響を受けたとのことでした。

次に、ジェフ・クーンズ、アンディ・ウォーホルといった有名なアーティストが当事者となった興味深い具体的な事例をわかりやすく楽しくご紹介いただき、Art Lawがどんなものなのか、馴染みのない私にも興味が湧いてくるようにご説明いただきました。

先生もおっしゃっていましたが、「好き」という気持ちが根底にあると、事例を紹介するにしても熱や気持ちが入り、聞き手にもそれが伝わってより興味関心が大きくなるのを感じました。

帰国後WEBで、情報発信。どんどん広がる可能性。

帰国後は、自身が立ち上げたウェブサイト「ART LAW WORLD」、Twitter等で情報発信を積極的に行ったそうです。忙しい弁護士活動の合間、気になるテーマを題材に記事をアップし続けた結果、様々な人の目に留まり、現代ビジネスなどのメディアへの寄稿、セミナー開催など活動の場がどんどん広がり、現在では業界誌「ウェブ版美術手帖」での連載を持つまでになられたそうです。

また、今後の展望として現在通信教育で履修されている英国の教育機関インスティチュート・オブ・アート・アンド・ローのArt Lawコースや毎年米国で開催され、全米の美術館インハウス、法律事務所の弁護士、アート関連会社のカウンセルが参加するカンファレンス「Legal Issues in Museum Administration」についてもご紹介いただきました。

最後に実際にご自身で購入されたアート作品についての動画もご紹介いただきました。

オーストラリアのストリートアーティストRoneがメルボルンの廃墟になった邸宅のあちこちに1年かけてポートレートを描き、インスタレーション作品として一般に向けて解放し、期間を過ぎれば取り壊されるという興味深いプロジェクト「Empire」。

Artの楽しみ方も進化していて、それに伴いArt Lawのニーズも高まるのではないかと感じました。

好きな分野を仕事にするためには、きちんとキャリアを築き、ブランディングを行い、その上で情報発信を行い、自身の存在をアピールし可能性を広げていく。こうした姿勢は、業界を問わず新しい事業を目指す時、とても大切な進め方ではないかと感じました。

近い将来、木村先生の活動の先に、日本でも「Art Law」が、当たり前に語られる日が来るのではと予感させるような新鮮なセミナーでした。ありがとうございました。